写真用フィルムについて
♪ It's Impossible (by Oscar Peterson)
--- フィルムは取替え可能な撮影素子のようなもの
フィルムカメラに興味がでたら、早速フィルムカメラを買いましょう。
でもその前に、カメラに入れるフィルムって決めてますか?
モノクロやカラー、ネガフィルムやポジフィルム、感度(ISO100,ISO400...)の種類などがありますが、
それよりも大切なこととしてフィルムの大きさによる規格(135,120...)をどうするのかというのがあります。
そのフィルムの大きさによる規格は非常に大事で、フィルムカメラを買ったんだけど詰めるフィルムが
もう売っていない規格のものだと、撮ることが出来ないという悲劇を生むことになります。
もう売っていない規格のフィルムを現存フィルムから切り出して詰め替えて使うという手がありますが、
手間を考えると現実的ではありませんので、普通に買って装てんできるフィルムを選ぶようにしましょう。
【フィルムの規格】
フィルムの大きさや形による規格は非常にたくさんあります...いえ正確にはありました。
もう既に生産中止したものや現存はしているが縮小一途で入手困難なものもあります。
これから始めようという人にそういったフィルムを勧めても長く使えないのではカメラも無駄になってしまいます。
いまでも普通に入手可能なフィルムである135フィルム・120フィルム・4x5フィルムの使用で、永くフィルムカメラライフを
楽しみましょう。
1。135フィルム(24x36mm)
小型カメラで使用するフィルム。
35mmフィルムと呼ばれるもので、一番親しんだフィルムではないでしょうか。パトローネという金属製カートリッジに
フィルムが入ったまま使えるので取り扱いが楽です。
実際写されるサイズである24x36mmというのは、デジタルカメラでいうフルサイズデジタル一眼レフの撮影素子と同じ
サイズになります。このフィルムはフィルムの長さによって36枚撮や24枚撮のフィルムが販売されています。
ハーフサイズカメラ(オリンパス ペンなど)で使用すると、24x18mmで撮るために撮影枚数は倍撮れることとなります。
◎撮影時の機動性
カメラが小型なので携帯性が良く、レンズ交換式では単焦点レンズのほかズームレンズも豊富にある。
△プリントの画質
大きく引き伸ばすと粒状性が目立つようになる。四切(10x12inch 254x305mm)サイズプリントぐらいまでが目安かも。
2。120フィルム(56x41.5mm, 56x56mm, 56x70mm...)
中判カメラで使用するフィルム。
ブローニーフィルムと呼ばれるもので、フィルムの長さは一定だけどカメラ規格によって写す範囲が異なるために、
撮影枚数が異なる。645判(56x41.5mm)では16枚撮り、66判(56x56mm)では12枚撮り、67判(56x70mm)では10枚撮りとなる。
また、68判や69判や612判などもある。
なかでも66判カメラでは撮影範囲が正方形になるので、写真が独特の雰囲気がでて個人的に好きなフォーマットです。
注意として同じ形状の220フィルム(フィルムの長さが倍)というのがありますが、これは縮小傾向があるのであまりお勧めはしません。
○撮影時の機動性
135フィルム使用のカメラよりも大きく重くなる。レンズ交換式では単焦点レンズが主流。
○プリントの画質
大きく引き伸ばしても粒状性は目立ちにくい。全紙(18x22inch 457x560mm)サイズプリントぐらいまでが目安かも。
3。4x5フィルム(4x5inch [102x127mm])
大判カメラで使用するフィルム。
上の2つの規格のようにロール状になっているものではなく、シート状のフィルムになっている。
フィルムの大きさを考えると、プリントしたときの高解像度は段違いであることが予想される。
ただ、残念ながら私は大判カメラを使用しませんので本サイトでは取り扱いしません。興味がありましたら「大判カメラ」
で検索してみてください。新たな世界が広がるかも...
△撮影時の機動性
カメラは大きくなるがレンズはそれほど大きくない。操作手順は多めで、三脚を使用しての撮影が基本。
◎プリントの画質
大きく引き伸ばしても粒状性はほとんど目立たない。
「撮影時の機動性」「プリントの画質」は一般的な傾向を独断で示しています。カメラの種類やフィルムの選択で
大きく変えられることもあります。またプリント時の粒状性が目立っても好みの描写であれば悪くない選択ですよね。
【フィルムの種類】
フィルムの規格が決まればフィルムカメラを買うだけですが、ついでにフィルムの種類を書いておきましょう。
・モノクロネガフィルム・カラーネガフィルム・カラーポジフィルム
大きく分けてこの3種類のフィルムが販売されています。モノクロポジフィルムというのもありますが、
非常にマイナーなので割愛させてもらいます。
フィルムカメラにこれらのフィルムを入れて写して、それぞれの現像処理をするとフィルムの出来上がりがそれぞれ異なるわけです。
自家処理をされる場合には、モノクロネガフィルムあるいはカラーネガフィルムを選択することになるかと思います。
昔はカラーポジフィルムでもチバクロームという印画紙にプリントすることがありましたが、今現在はカラーポジ
フィルムで自家現像プリントされている方はほとんど居ないかと思います。
ここでは最終的に自家現像プリントを前提としていますので、モノクロネガフィルムあるいはカラーネガフィルムを
使ってのフィルム現像・プリント処理を書いていきます。
・感度
フィルムには光に対するフィルム感度を示す「ISO●●●」(昔はASA●●●と呼んでいた)という数値があります。
だいたい「ISO50~ISO800」ぐらいが常用フィルムでしょうか。もっと低いものや高い数値のものもあります。
撮影する場合、この数値が高いと感度が高くなり、その分シャッター速度を早くして写せるため手振れなどを心配しなくて良いようになります。
例えばISO100フィルムで絞り固定にした場合、ISO400のフィルムに変えるとシャッター速度は4倍速い数値で写せることになります。
じゃあ数値が高い方が良いんじゃないかと思うのですが、数値が高くなるとフィルムの粒状性が粗くなっていきます。
はじめは「ISO100~ISO400」のフィルムで始めるのが良いでしょう。
またこの感度は標準現像した場合の数値ですので、自家現像処方では自由に変化させることも可能です。ただ、その場合には
デメリットも多々出てくることを覚悟する必要があるかもしれません...
・特殊フィルム(赤外フィルム・コピーフィルム)
主にモノクロネガフィルムですが、特殊なフィルムというのが存在します。
光の波長に対する受光できるフィルムの範囲というのはフィルムそれぞれで異なっています。特に波長の高い赤色域では
一般のフィルムでも受光の多さ少なさでフィルムの個性があります。(オルソやパンクロという種別で分けられています)
その一般的な波長域を超えて眼に見えない赤外域まで写す事ができる赤外フィルムというのもあります。その赤外フィルムを
使う場合には、可視波長をカットするシャープカットフィルタ(IRフィルタ)をレンズに付けて撮影します。一種独特の描写が得られるので
個人的に好きなフィルムです。
また、コピーフィルム・リスフィルムと呼ばれる文献を複写するためのフィルムもあります。これはそのまま写して現像
しても白と黒だけで構成されるほどのコントラストの高いフィルムですが、現像処方で超軟調な現像液を使用することで
グレイ域が表現できるようになります。このフィルムを一般撮影で使用するメリットは超高解像度で撮影できることに尽きるかと
思います。あまりにも超高解像度なので135フィルムでも大きく引き伸ばしプリントしても粒状性を感じさせないほどです。撮影時の
シビアな露出と現像処方を克服できれば超高解像度のプリントを得られることになります。
※フィルムを安く調達するには?
写真をバシャバシャとたくさん撮る人にとってはフィルムの価格は結構財布に厳しくなります。
インターネットで安価な情報を得て買うというのはもちろんですが、【業務用フィルム】や【長巻フィルム】を
使うという手もあります。(135フィルム限定になります)
業務用フィルムはカラーネガフィルムを使用する人にお勧めです。これは、何十本かのフィルムを
簡易梱包パックしたものですが、何ら問題なく普通に写ります。入手先はインターネット中心になりますが、
中古カメラ屋で販売しているところもあります。
長巻フィルムは主にモノクロネガフィルムを使用する人にお勧めです。ただし、フィルムの銘柄により用意していない場合も多いです。
これは缶に100フィート(30.5m)分のフィルムがそのまま入っているもので、下図のように
詰替用パトローネにフィルムローダーという巻取り機を使って自分でフィルムを詰替えすることになります。
100フィートで36枚撮フィルムが約18本ほど出来上がります。詰替用パトローネとフィルムローダーの値段を考えると、
元をとるにはどれだけのフィルムを消費する必要があるかを計算してから考えてもいいかと思います。
追記。その後に業務用フィルムは残念ながら生産終了して在庫限りとなっています。
また長巻フィルムに関しては、Diary(2020.08.06)に作業手順や注意点を少し記述しています。
※フィルムの保存は?
買ってきたフィルムをすぐに使うのなら別にどこに保存するかを考えなくていいですが、しばらく使う必要の
無いフィルムであれば、冷暗所に置いておくほうが良いでしょう。
私はまとめて買いますので、近日中に使うものであれば冷蔵庫に保存し、しばらく使う必要の無いものは冷凍庫に
保存しています。私の冷凍庫には何年も使用していない消費期限を越えた製造中止のフィルムが眠っています...
冷蔵庫や冷凍庫から出して使用するときには、カメラに装てんする数時間前に取出して霜が完全に抜けてから
包装を解いて装てんするようにしてください。
また、カメラの中に何ヶ月も同じフィルムが入ったままというのも出来れば避けたいです。フィルムを全部写してなくても
長期間になる前に取り出して現像処理をするように心がけましょう。
(私のフィルムの取り扱いについては、Diary(2023.03.20)に記述しております)