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印画紙の種類について (モノクロ・カラー)

♪ How I Got Over (by Aretha Franklin)
 --- 年賀状も印画紙で自家プリントしてみては?

印画紙

印画紙は多種多様なものがあります。(特にモノクロ印画紙)
主にモノクロ印画紙になりますが、印画紙を選ぶにあたり注視すべき箇所を書いていきます。
プリントをやり始めると色々な印画紙を試してみたくなります。有名なメーカーの標準的な印画紙なのに自分に合わないとか、 癖があるのに変に気に入る印画紙だったり、ぜひ自分のお気に入りになる印画紙を探してみてください。


【印画紙の取り扱い】

印画紙の中

一度でも印画紙を扱ったことがある人には当たり前のことですが、印画紙は光に当たると感光して使えなくなります。
ですので暗室の中とはいえ、作業中での普通照明を点けたり消したりする際には細心の注意が必要です。
そうは言ってもプリントを経験している人は、1回や2回程度は印画紙を全て駄目にした経験があるんじゃないでしょうか。 印画紙を1枚取り出したら、すぐに印画紙を遮光する習慣をつけましょう。
印画紙のパッケージの構造は、箱などの外装の中に黒いビニール袋などがある2重構造になっていて、その中に印画紙が入っています。
他の人はどうかわかりませんが、私は作業中ではこの黒いビニール袋に入った状態で印画紙を1枚取り出したら、すぐにビニール袋の 端を折り返して光が入らないようにしています。
人によっては、遮光された印画紙専用の引き出しを作って、それで作業される方もいっらしゃいます。


【印画紙の大きさ】

印画紙を選ぶにあたり、引伸ばしたい印画紙のサイズが用意されているかの確認も必要です。 主な大きさを以下にあげていますが、メーカーがラインナップしている製品の印画紙サイズはその中のいくつかを 用意しているに過ぎません。またこれ以外のサイズも用意している場合もあります。 好みのサイズが無くてもその好みのサイズより大きなサイズの印画紙を買ってプリント乾燥した後に裁断するという手もありますが...
ちなみに私は、モノクロ印画紙ではテスト用は六切・本番プリントは小全紙を選び、カラープリントではテスト用は六切・本番プリント は半切を選んでプリントしています。
(その後モノクロ印画紙は小全紙だけを購入して、テスト用サイズなどは手作りカッター台を使って自分でカットして対処することにしました。 詳細はDiary(2019.06.15)に記述しています)

大きさ 名称
5x7inch (127x178mm) 大キャビネ
6.5x8.5inch (165x216mm) 八切
8x10inch (203x254mm) 六切
10x12inch (254x305mm) 四切
11x14inch (279x356mm) 大四切
14x17inch(356x432mm) 半切
16x20inch(406x508mm) 小全紙
18x22inch(457x559mm) 全紙
20x24inch(508x610mm) 大全紙


【モノクロ印画紙】

カラー印画紙に比べるとモノクロ印画紙は多種多様です。その中から自分の好みに合った印画紙を選ぶことになります。
例えば私であれば、バライタ紙&多諧調&純黒調&グロッシーの印画紙を好んで使用しています。
もし初めてプリントされるのであれば、水洗・乾燥処理が容易なRC紙でコントラストを自由に変えられる多諧調の 印画紙から選ばれるのが良いんではないでしょうか。

・RC紙およびバライタ紙

RC紙は、紙をポリエチレンで挟んだうえに乳剤等を塗布した構造であるために液体に触れても紙に張りがあります。 RC紙の利点はたくさんあり、作業時の水洗処理が少なく済むうえに乾燥後での平面性も保ったままでいられます。 また液体に触れてもほとんど伸縮しないため、暗室作業で行った濃度が乾燥後でもほぼ同一の仕上がりになります。
一方バライタ紙は、紙にバライタおよび乳剤等を塗布した構造であるため液体に触れるとふにゃふにゃな状態になります。 バライタ紙の欠点はRC紙の利点の裏返しで、作業時の水洗処理は多くの時間を掛けねばならず且つ乾燥後は 紙が波をうった状態になるためにフラットニングという平面にする作業が必要になります。またバライタ紙は液体に触れると 伸びますので、暗室作業での濃度をそのまま乾燥させると最終的には意図した濃度より濃い状態になってしまいます。 ですので暗室作業ではあらかじめその分の露光時間を引く必要があります。
じゃあなぜバライタ紙のように扱いにくい印画紙があって使う人が居るのかといいますと、主に黒色の描写と保存性 にあるのではないかと思います。一般的にRC紙よりバライタ紙のほうが黒色がより黒い描写ができるため最終的な 写真がより引き締まった感じになることが好まれているんでしょう。また昔はバライタ紙しかありませんでしたので、 保存性でいえば充分に経過年数が結果として現れていることもあるかと思います。
まずは取り扱い易いRC紙でプリントして不満があったときにバライタ紙を試すというのが良いような気がします。

・多諧調紙および号数紙

多諧調印画紙

(上図例は多諧調紙1枚を使用して左右異なる号数でプリントしたものです)
現在では多諧調紙(マルチグレード)が主流になっており、特別な意図がないかぎり多諧調紙を選択するのが良いでしょう。 これら印画紙の分類はコントラストをどうするかによって分かれています。
コントラストの高低は主に0号から5号までで表現され、0号は非常にコントラストが低く、5号は非常にコントラスト が高い状態となります。(0号-1号-2号...5号の順番にコントラストが高くなる)
多諧調紙では、引伸機の露光時に引伸機のダイクロックあるいはフィルタを変化させることで、1枚の印画紙を自由に コントラストを変化させることが出来ます。モノクロプリントでは濃度とコントラストを好みに合わせる作業をしますので、 コントラストを自由に変化させることができる多諧調紙は好みに合わせることが容易にできます。また、1枚の印画紙で コントラストを変化できますので、露光時に号数の異なる設定を複数回露光を行うことで軟らかな描写を維持しつつ 引き締まった写真にもすることができます。
一方、号数紙では引伸機の露光時でのコントラストが一定であるため、号数の異なる印画紙を複数用意されています。 ただ現在では少しコントラストの低い2号紙と少しコントラストの高い3号紙の2つだけが用意されているのが 多いように思います。プリントしたときのコントラストが低い場合には高い号数の印画紙に変えてプリントし、逆に プリントしたときのコントラストが高い場合には低い号数の印画紙に変えてプリントするわけです。ただそれでは 表現域が限定されますので、現像液を調合してコントラストを低めたりあるいは高めたりすることが多いです。 または、処理する現像液をコントラストの低くなる軟調な現像液と、コントラストの高くなる硬調な現像液の2種類 用意して2浴現像をしたりもします。ただテストプリントを含めると好みのコントラストを得るには手間が掛かります。 よっぽどその印画紙が好みという場合を除いて号数紙を選ぶことは無いように思えます。ですので今ある号数紙は 非常に個性的な印画紙がラインナップされているように感じます。

・温黒調および冷黒調および純黒調

標準現像液を使用したときの印画紙に写る像の色による分類です。
黒色が茶色に少し寄った暖かな色合いの温黒調、黒色が少し青みがかった凛とした色合いの冷黒調、黒色に偏り無く 黒色として表現される純黒調があります。(冷黒調の印画紙の種類は少ないです)
ただそれは標準現像液を使用した場合であり、自家調合の現像液で色合いをコントロールすることも可能です。 その場合は印画紙によって上手く効いたり効かなかったりしますのでテストプリントは必要です。
印画紙の色合いをもっと劇的に変化させたいのであれば、定着処理後に調色処理を加えることで大きく色合いを 変化することができます。調色液は色々な色のものが用意されています。ただ、調色処理では印画紙により色合いの効果が 異なりますので、印画紙との相性を事前に調べる必要があります。さらに、もっと多彩な色合いに変化させたい場合には、モノクロ ネガフィルムをカラー印画紙で処理するという手もあり、下記のカラー印画紙に少し記述していますのでご参照ください。

・光沢紙(グロッシー)および半光沢紙(セミマット)および無光沢紙(マット)

印画紙表面の状態を示します。色々な呼び名と状態がありますが、印画紙表面の反射の仕方で分けられています。
光沢紙は光を当てると多くの光をそのまま反射するため表面がテカテカしています。逆に無光沢紙は光を当てると 多くの光を分散させるために表面はあまり変わりません。半光沢紙はその中間となります。
これはお勧めするものではなく好みで選ぶ項目かと思います。量販店の印画紙コーナーでサンプルとして展示している 所もありますので、じっくり見て好みのものを選ぶようにしましょう。

・その他

紙厚も印画紙によって違い、今は厚手や中厚手が多いですね。薄手というのもかつてあったようですが私は使ったこと無いです。 またベースの色も白色からクリーム色まで印画紙によって異なります。


【カラー印画紙】

自家カラープリントで使用できる印画紙は、フジフィルム製かKHT製(コダック製のを裁断したもの)の2択に なるかと思います。大四切(11x14inch)サイズよりも大きなサイズはフジフィルム製だけになります。
カラー印画紙はバライタ紙は存在せずにRC紙だけになりますので、水洗・乾燥処理は容易です。(RC紙については 上記モノクロ印画紙を参照ください)
また、カラー印画紙はコントラスト調整というのがほとんど出来ません。唯一、フジフィルム製の印画紙の種類によって コントラストの高低の異なる印画紙を選ぶことで少し変化させることが出来ます。フジフィルム製では表面の状態で 光沢紙やマット紙を選ぶことが出来ます(名称は少し異なりますが...)。KHT製は光沢紙のみです。
カラー印画紙はモノクロ印画紙に比べて使用期限が短く、生産してからだいたい1年ほどになっています。 保存時は冷蔵庫などに入れておいたほうが良いですね。使用期限を大幅に超えてくるとベース色が黄色く発色が悪くなって、 プリントしても昔撮った写真のような感じになります。もし使用期限を大幅に超えたときには、あえてそういう発色をさせたい画像を 選んでプリントするのも手かもしれませんね。
あとカラー印画紙はカラーネガフィルムを前提としておりますが、別にモノクロネガフィルムでプリント処理しても構いません。但し、 カラー印画紙はコントラスト調整はほとんど出来ない(印画紙の種類を変えるしかない)のでカラー印画紙に合うモノクロネガフィルムの 状態とは、モノクロ印画紙で2号や3号などの号数値でストレートプリントできるような状態であるフィルムのコマが適しているのでは ないかと思います。
モノクロネガフィルムでもカラー印画紙を使えば、下図のように好きな色合いでプリント処理するというのも選択肢として頭の片隅にでも 入れておいても良いかと思います。

モノクロフィルムをカラー印画紙で

カラー印画紙はモノクロ印画紙に比べて、生産しているメーカーが少なくて寂しくもあります。 それだけ自家カラープリントをする人が少ないんでしょうけど、その分人と違ったことをしているという満足感は 得られるはずです...はずだと思うんですけどね。