フィルムカメラからプリント処理までの便利なガラクタ箱2
♪ C'est La Vie (by Ace Of Base)
--- 無い物は自分で作ってみよう
ガラクタ箱のページが長くなってきましたので、こちらに追加するようにしています。
項目。
・ピンホールカメラ用のスポーツファインダーの工作
・プリント用テストスケール(テストストライプ)の工作
・手持ちでピンホールカメラ撮影
【ピンホールカメラ用のスポーツファインダーの工作】
私は大判用ピンホールカメラを中判フィルムフォルダーで使えるように改造したもので撮影することもあります。
そのピンホールカメラは単なる暗箱でファインダーも無いので、下図のようにカメラの上部と側面に縦横のテープを張って撮影範囲を
確認しているようにしていました。
でもいざ撮影となると、左右上下と視線を移動して撮影範囲を確認する必要があって面倒なんですね。
レンズを使った光学式ファインダーって売っていますが高いうえに6x7判で焦点距離の合った物がありませんので、スポーツファインダー
というものを作ってみました(今回のは速写するものではないので、スポーツファインダーと呼んで良いかわかりませんが...)。
スポーツファインダーとは単なる素通しの構造の単純なファインダーで、ピンホールカメラ以外では水中カメラでよく使われている
ファインダーなんです。ただ、レンズを使わないために嵩張るのが欠点です。それゆえ、折り畳みができるようにして収納性を
よくしました。また50mmと75mmの焦点距離を持つ2つのピンホールカメラ共用にしたく且つ縦横位置でも確認できるように、透明の
アクリル板を投影板にして撮影範囲がわかるように作りました。
っで、工作の前に視点距離と投影範囲を下図を用いて簡単に説明します。
単なる透視ファインダーなので、視点距離と撮影範囲だけの数値で事足ります。等倍で作る場合には、視点距離
は「レンズの焦点距離」をそのまま割り当てます(今回ピンホールカメラなのでレンズはありませんが...)。そして、撮影範囲の
縦横のサイズは「フィルムの露光サイズ」をそのまま割り当てます。フィルムの露光サイズとは以下のようになります。
フィルムサイズ | 縦 x 横 |
135フィルム | 24 x 36mm |
120フィルム645版 | 56 x 41.5mm |
120フィルム66版 | 56 x 56mm |
120フィルム67版 | 56 x 70mm |
(レンズの焦点距離=視点距離)と(フィルムサイズ=撮影範囲)がわかっていれば作れるわけです。
ここまで等倍で説明しておりますが、コンパクトに作りたいとか大きくしたいとか思った時には、視点距離と撮影範囲の
縦横サイズの3つの数値を同比率で掛ければ良いだけです。最初の写真の2つのファインダーは、同じカメラ用に等倍サイズと
2倍サイズのスポーツファインダーを作ったものです。2倍にすると投影板の面積は4倍になりますので、思った以上に大きく
感じるかもしれません。(別に整数倍である必要はありません)
下記に用品や作成方法を記述しておりますが、最初の写真に2つファインダーが写っていることから少なからず
失敗もしております。その中でも一番の失敗とは、自分の老眼の進み具合を把握していなかったことです。最初は小さな等倍の
ファインダーを作ったのですが、近くが見え辛い老眼が入った私にとっては、投影板の境界線がボケすぎて辛いのです。そこで
追加として、視点距離2倍のファインダーを作ったわけです(ちょっと大きいですけど)。スポーツファインダーを参考して作成
される場合は私と同じ失敗をしないために、まず自分の眼に合った視点距離の倍率を考えてから作成されることをお勧めします。
また他の失敗もしているので、作られる方は一通り眼を通されて改善箇所の確認をした方が良いかと思います。
でははじめましょう。
用品と道具
・アクリル板
厚さ2mmのアクリル板で、透明のものと黒色のものを使用します。
・アクリルカッターとやすり
アクリルカッターはアクリル板を切るためのカッターです。やすりは100番手の紙やすりと細めの金属やすりを使用しました。
・アクリル塗料と筆とパレット
透明アクリル板に撮影範囲などを記すために使用します。
・バネ蝶番あるいは蝶番とマグネットキャッチ
ほぼ90度を保つようになったバネ蝶番を使用した場合と、蝶番と戸棚で使うマグネットキャッチを使用した場合との2通りの方法を
試しました。
・アクリル樹脂用接着剤と多用途用接着剤
アクリル同士を接着する接着剤と、アクリルとその他材質とを接着する接着剤とを使い分けました。それぞれ、アクリサンデーと
セメダインスーパーXGという商品名のものです。
・ビニールテープ、フエルトのクッション、はさみ、定規、カッティングマットなど
作成手順
切って・塗って・貼り付けるだけです。設計図というほどのものでは無いですが、
こちらのPDF文書をダウンロードして参考ください。
いくつか小さな部品は省いておりますので、臨機応変に対応くださいませ。
1。アクリル板を切ってカット面をやすりで滑らかにする
アクリルカッターってアクリル板を切るのではなく、削って割るということをします。(定規に沿ってカッターを20回ほど引いてから割る
ということをします)
カットした後はそのままでも良いのですが、やすりでカット面を滑らかにできる時間があればやった方が良いですね。また一部の伸縮部に
よっては下記のような形状にするために金属やすりで薄くした部品もあります。
2。撮影範囲を塗装する
覗き窓と撮影範囲の透明アクリル板に塗装します。正直ここが一番面倒で時間が掛かります。
プリントアウトした設計図の上に透明のアクリル板を載せて、マスキング位置を確認してテープを張ってアクリル塗料で塗るわけです。
私は、マスキングテープでは浸透するかもっと思ったので、ビニールテープでマスクした後で筆で塗りました。延々と「マスクする>
塗る>乾かす>マスクを剥がす」を繰り返すわけです。
3。覗き窓を作る
全てアクリルなので、アクリル樹脂用接着剤で接着します。
最初の等倍ファインダーでは透明板と黒色板をそのまま接着したのですが、それだと折り畳むとバネ蝶番の関係で投影板と当たることが
わかり急遽上端をカットしました。まぁ視線がこの辺にあれば良いだけなので気にしないのですが失敗は失敗です。そこで2倍ファインダー
の時には閂(かんぬき)構造で伸縮できるように改善しました。でも2倍ファインダーの時はバネ蝶番ではなく普通の蝶番だったので、
別に伸縮せずとも折り畳みできたんですよね...なにやってんだか。
4。土台に覗き窓と投影板を接着する
2パターンで作りました。1つはバネ蝶番だけで、もう1つは蝶番とマグネットキャッチを使っています。どちらも蝶番が金属なのでアクリル
との接着が不安であれば、アクリルで出来た蝶番も売っていますのでそれを使用ください(アクリルのバネ蝶番は無いけれど)。蝶番の下
には何枚かのアクリルを接着して少し嵩上げしています。アクリルとその他素材の接着には多用途用接着剤をご使用ください。っでマグネ
ットキャッチですが、2倍ファインダーの投影板は結構大きくて重いせいか1つのマグネットキャッチでは磁力が足りなかったので急遽2つ
追加しました。そして、同様に覗き窓の方も土台に接着します。
2パターン作ったわけですが、バネ蝶番よりも蝶番とマグネットキャッチの方が使い勝手が良いような気がします。
5。その他
ピンホールカメラの上に置いて使用するわけですが、ピンホールカメラに改造で付け足した金具やマジックテープがありますので、
これらと当たらないようにスポーツファインダーの裏面にフエルトのクッション足をつけました。
6。完成です
蝶番を使用してますので、折り畳めば下図のように薄くなって携帯性も良いです。
さっそくピンホールカメラの上に置いて使ってみると、広角の度合いが大きいために覗き窓は逆に邪魔になるように感じます。標準
~望遠でしたら覗き窓が要るでしょうけど、広角であれば眼の位置さえわかるようにすれば覗き窓は無くても良かったように思います。
また、撮影対象物が数メートル程度の近接時では、ファインダーで確認した構図と実際にフィルムに写される範囲との視差(パララックス)
が生じます(外付けファインダーなのであたり前ですが...)。それが気になるようでしたら、ファインダーで構図確認後に三脚の
エレベーター機能で少し上げることで視差が気にならなくなるかと思います。
以上作成したのは置くだけのスポーツファインダーですが、135フィルムカメラ用に作ってホットシューにスポーツファインダーを
付けたいと思ったときには、2mmアクリル板を少し削って薄くすればホットシューに入るように工作できるかと思います。下図は別の
自作ファインダーですが、土台はアクリル板でホットシューに合うように作ってます。
スポーツファインダーの投影板は別に透明アクリル板ではなくワイヤーで投影範囲を作っても良いですし、原理が簡単ですので必要な時
にいろいろ工夫して作ってくださいませ。
【プリント用テストスケール(テストストライプ)の工作】
私は暗室プリントにおいて、露光時間を決める際はまずテストプリントを行ってから本番プリントという過程で
行いますが、そのテストプリント時にはテストスケールを使うことが多いです。一発で露光時間
を決められる方には不要なものなのかもしれませんが、少なくとも私にはテストスケールは必要な道具なのです。っでそのテストスケール
で私が持っているものは下図のシート状の扇形モデルのものとハンザ製の同心円モデルのものとがあります。ただ実際に使っているのは
同心円モデルの方ばかりで、それはテストスケールの諧調が等間隔で繋がっているために露光時間が読み取りやすいというのが一番の理由
なんです。そのよく使っているハンザ製の同心円モデルのテストスケールは気に入ってはいても、残念ながら生産中止で新たに手に入れる
ことはできません。手元に1個あるので問題ないですが、予備用にあっても良いかなと思って同心円モデルのような諧調が等間隔で繋がって
いるテストスケールを作ってみたわけです。
ハンザ製の同心円モデルは指で弾いて回転させることで、露光中の長い時間まで回転できるように作られています。
最初はアクリル板で作ろうかとも思ったのですが、回転をバランス良く作るには私の技量では全然足らないと確信しましたので、他の
方法で検討することにしました。っで結局は、扇形モデルのようにシートにプリントアウトすれば、事足りるんじゃないかと思ったのです。
工作というほどのものでもなくて技量も必要いりません。
最初はそのシートをPCからOHPフィルムにプリントしようと思ったのですが、よく考えるとOHPフィルムって過去の経験で黒が黒く印刷され
ない上にムラがかなり出るんですよね。そのOHPから作ったテストスケールを使っても役に立たないのは明白です。そこで回路基盤転写用
フィルムであれば大丈夫かなと思っていたのですが、よく考えるとデジタルネガを作るフィルムであれば引伸機の露光を使う前提で
ムラも出ないはずなので、それで試してみることにしました。回路基盤転写用フィルムより安いですし...それでもちょっと高いです。
心配だったのは私の持っている安物インクジェットプリンタでも大丈夫かどうかで、それは結果要らぬ心配でした。
ちなみにデジタルネガというのは、デジタルデータをPCから透明フィルムにプリンタで出力してそのフィルムを
銀塩の印画紙に密着プリントするというデジタルと銀塩とを融合した方法で使うネガフィルムで、その時にネガでプリントアウトした
透明フィルムのことをデジタルネガと呼んでいます。私自身がその用途で使うことはないと思いますが、デジタルカメラで銀塩プリント
したい場合や、密着プリントせざるを得ないプリント手法(サイアノプリントなど)を使う場合や、同品質で大量にプリントされたい場合
(覆い焼きなどで同じプリントが作り難いとき)などに使用されているかと思います。
話がそれましたが、
注意点
があります。
PCで作ってプリントアウトしたものをテストスケールとするわけですが、PC上のソフトで作った濃度値とプリントアウトされた濃度値は
必ずしも一致しないということなんです。デジタルネガ用フィルムの透過度も少し関係ありますが、それよりもPCとプリンタによる濃度値の
違いが大きく関わってきます。それらを一致できるようなICCプロファイルを持っていれば良いんでしょうけど、それに対応したソフトと
プリンタは残念ながら持っていません。
私のような人も多いでしょうから、テストスケールを作成する前には濃度値を合わせるためのキャリブレーション作業が必要となるわけです。
作業的には、細かいグラデーションを作成しプリントアウトして、暗室にて印画紙に焼いて数値を求めるということをしました。銀塩の
印画紙は線形に濃度が上がるわけではないので焼くのが一番ですからね。
(それを考えると、シート状ではないハンザ製の同心円モデルのテストスケールはよく考えて作られていますね)
っで、作るテストスケールはハガキサイズぐらいが使いやすいので、購入したデジタルネガ用フィルムを4分割して
ついでにいくつかのパターンを追加しました。また表示数値は露光時間の倍数にし、例えば10秒露光で 0.5 のところが丁度良ければ、
10 x 0.5 = 5.0秒が適正露光時間となるようにしました。その方が個人的に使いやすいので...
前置きがやたらと長くなりましたが、まぁとにかく始めましょう。
用品と道具
・デジタルネガ用フィルム
ピクトリコのTPS100N-LTRというレターサイズ(A4に近いサイズ)で20枚入りの製品を使用しました(少し乳白色している)。裏表があるので
プリント時には間違わないでくださいね。
・PCとインクジェットプリンタ
フィルムがインクジェット仕様ですので、インクジェットプリンタが必要です。
・カッター、定規、カッティングマット、プラ板、両面テープ
フィルムをカットする道具や、持ち手を作るためにプラ板と両面テープを使用しました。
・マットボード、リネンテープ、無酸性紙、のり
単に作ったテストスケールを収納するためのものです。
作成手順
PC上で作ってプリントアウトするだけなのですが、上記に書いているように濃度値を合わせるキャリブレーション作業がありますので、
二項に分けて記述しています。
【キャリブレーション作業手順(前処理)】
私がドローソフトで作ったキャリブレーションパターンのPDF文書です。
六切り(8x10inch)で行うサイズにしております。
1。PC上のドローソフトなどでキャリブレーションパターンを作りプリントアウトする
キャリブレーションパターンをPC上で描画します。その際には塗り潰しの色が重要で、ソフト上で塗り潰し色設定をRGBからHSVに変更して、
H=0,S=0として明度であるVの値を変化させることで塗り潰し濃度を決めるようにします。キャリブレーション用であるので、V=100%(1.0)
~0%(0.0)までを5%毎に変化させたグラデーションにしました。
できましたらプリンタに合った設定でデジタルネガ用フィルムにプリントアウトして、カッターで適当なサイズにカットします。
2。暗室で印画紙に焼きます
皆さんが手馴れた暗室で作業するのですが、その際にキャリブレーションパターンと手作業で段階露光したものを暗室プリントするわけ
です。私は下図のような感じで、1枚にプリントしました。テストスケールでは濃度が80%(0.8)~10%(0.1)に変化させた9段階のものを
作りますので、その9段階分を段階露光しています。
具体的に私が行った作業ですと、よく使う2号の状態にして下半分を覆って上半分のキャリブレーションパターンを30秒露光してから、
上半分を覆って下半分は作りたい9段階分の濃度のパーセンテージに合った秒数を露光します。80%(0.8)のところであれば24秒露光される
ようにするわけです。印画紙同じ箇所を複数回重複露光する方法で行う場合には、累計として正しい秒数を与えるようにしてください。
これでキャリブレーションパターンと手作業の9段階の露光が1枚にプリント出来たわけです。
その後はいつもの現像処理などをして仕上げます。
3。キャリブレーションを行う
印画紙のキャリブレーションパターンと実際の段階露光したものとで数値を求めます。簡単に段階露光したものに合うキャリブレーション
パターンの数値を割り当てても良いかと思います。私は一旦スキャナに読み込ませて濃度値を求めると以下のようになりました。
修正前の濃度値 | 修正後の濃度値 |
80% (0.80) | 97% |
65% (0.65) | 79% |
50% (0.50) | 56% |
40% (0.40) | 44% |
30% (0.30) | 31% |
25% (0.25) | 26% |
20% (0.20) | 20% |
15% (0.15) | 15% |
10% (0.10) | 8% |
っと私の環境下ではなるようですね。ここで求まった修正後の濃度値を、テストスケールを作るときのソフト上の 明度のV値として割り当てるようにします。
【テストスケール作成手順】
私がドローソフトで作ったテストスケールは以下になります。
・キャリブレーション前のテストスケールのPDF文書
・キャリブレーション後のテストスケールのPDF文書(あくまで私の環境下において)
キャリブレーションの前後ではだいぶんと濃さが異なりますでしょう。ですのでこれら文書は、自分の環境に合ったようなパターンを作る
際の参考程度とでも思ってください。
1。PC上のドローソフトなどでパターンを作りプリントアウトする
自分がプリントの際に使いやすいパターンを描画します。その際の塗り潰しは上記と同様にRGBからHSVに変更して、H=0,S=0として明度で
あるVの値をキャリブレーション作業で求めた修正後の濃度値を割り当てるようにします。今回はV=80%~10%まで変化させた
グラデーションにしました。
とりあえず出来ましたら、プリンタに合った設定でデジタルネガ用フィルムにプリントアウトします。
2。フィルムを4分割にカットし持ち手を付ける
A4サイズに近いレターサイズのフィルムなので、カッターで4分割しプラ板で持ち手を作りました。暗室で手袋をはめたままではシート状の
ものは置いたり取り除く時に苦労するために持ち手をつけたのです。
3。収納用の窓無しブックマットを作る
単に他で使ったカット後のミュージアムボードが余っているので、テストスケールの収納用として作っただけなんです。ミュージアム
ボードにピュアガードを無酸性のりで接着してリネンテープで留めました。こんなとこで凝っても仕方がないのですが...
フィルムなので折れないように収納できるようであれば、どのような方法でも良いんですよ。
4。完成です
どうでしょうか。最初のキャリブレーション作業が少し面倒ですけど、工作というほどの作業ではないと思います。今回使用したデジタル
ネガ用フィルムは思った以上にムラが無く諧調に優れていることにビックリしました。今後はデジタルネガ用フィルムは、印画紙で写真
ハガキを作るときにメッセージなどを入れる時のマスクとして使用できそうです。
テストスケールは既に日本では販売されていない道具だと思いますので、便利そうだなぁっと思ったらぜひテストスケールを作ってみて
くださいませ。
【手持ちでピンホールカメラ撮影】
そもそもの切っ掛けは、コダックがモノクロフィルムの超高感度フィルムT-MAX P3200の再販を開始したことでした。
もともと超高感度といってもあまり興味がなくて過去にISO400のモノクロフィルムまでしか使ったことがありませんでした。でも再販だし
っと思ってコダックのサイトでデータシートをあらためて見てみると、ISO感度3200に対して露光指数(EI値)が400~25000までの各現像液に
対する現像時間が載ってるんですね。25000って凄いなぁっと思ったのですが、良く考えると3200に対して3段の増感値なんですね。さらに、
ISO100フィルムから考えると25000は8段ほど高いわけなんですよね。8段かぁっと考えていたら、たしかピンホールカメラはそれぐらい露出
が必要だったなぁっと思ってしまったのです。それならもう、手持ちでピンホールカメラを使用できちゃうんじゃないかと思って試して
みたわけなんです。
っで、持っているピンホールカメラを使えれば良いのですが、そのピンホールカメラのシャッターは手でレンズ
キャップを外したり付けたりするようなものですので、手持ちでの速いシャッターを切ることが出来ません。では135(35mm)フィルムを使う
昔の一眼レフのレンズ接合部にピンホール部品を付けれるようにしようと思ったのですが、一眼レフってミラー構造があるためにフランジ
バックが長いんですよね。それでピンホールカメラにしても標準レンズぐらいの焦点距離になってしまい、できれば広角にしたいという
私の要望とは異なります。ライカとかのレンズ交換式のレンジファインダーカメラがあれば広角にすることは可能なのですが、残念ながら
私はそのような機種を持っておりません。そこで、なぜか同じ物をたくさん所有しているオモチャ的カメラを改造してピンホールカメラに
することにしました。そのオモチャ的カメラのシャッタースピードは1/125s固定で変えられないため、ピンホールカメラに改造しても露出
は常に一定ということになります。まぁそれゆえ、晴れの日の撮影を前提での手持ちピンホールカメラということにして、多少の露出違い
はネガフィルムのラチチュードにお任せするということにしました。使いきりカメラの感覚に近いでしょうか...
晴れの日(LV値14とする)前提ですので、シャッタースピード 1/125s固定で絞り値と感度の同露出での組み合わせは以下のとおりになります。
No | 絞り値 | 感度 |
---|---|---|
1 | F11 | 100 |
2 | F16 | 200 |
3 | F22 | 400 |
4 | F32 | 800 |
5 | F45 | 1600 |
6 | F64 | 3200 |
7 | F90 | 6400 |
8 | F128 | 12800 |
9 | F180 | 25600 |
10 | F256 | 51200 |
絞り値は、ピンホールカメラの焦点距離とピンホール穴の直径で求まります。焦点距離はフィルム面からピンホール
穴までの実測値をあてます。
今回はベースとなるカメラでは、焦点距離25mmのピンホール穴直径0.2mmを予定しておりますので、
25mm / 0.2mm = 125
絞り値は、F125となるわけです。
上記表から抜き出しますと、8番目の絞り値F128の感度12800が近くて、フィルム現像での増感処理は2段ほどすれば丁度良いということに
なります。それを目標に工作と現像処理をすることとします。
ベースとなるカメラは各々の選択で変わるかと思いますので、ピンホール穴を開ける工作を中心にその他は大雑把に
記述いたします。ピンホール穴を開ける方法はいろいろあるようですが、なるべく工作が楽でテクニックの要らない方法で行いました。
では始めましょう。
今回ピンホールカメラの穴を開ける工作をするにあたり、下記サイトを参考にさせていただきました。
・VIC's Pinhole Photograph
http://vicsdiy.com/pinhole/index.html
・ピンホールカメラを作ってみよう
http://www.toshi-photo.com/Tutorial/TutorialIndex01.html
(ホームページはhttp://www.toshi-photo.com/Jpwelcome.html)
用品と道具
・ベースとなるカメラ
今回はオモチャ的カメラを改造しましたが、一眼レフやレンジファインダーのレンズ接合部のボディキャップにピンホール穴を付ける
のが、楽で良いんじゃないかと思います。
・銅箔と絹針と紙やすり
銅板ではなくペラペラの0.02mm厚の銅箔と、すごく細い絹針を使用しました。また紙やすりは400番手の非常に細かいものを使用しました。
・プライマー(下地処理剤)とアクリル塗料と筆とパレット
プライマー(下地処理剤)はGSIクレオスのMr.メタルプライマーというのを使用し、つや消し黒色の塗料はターナー製のアクリルガッシュ
のジェットブラックというものを使用しました。つや消し黒色で塗るにはお勧めの塗料です。
・プラ板、接着剤
オモチャ的カメラを改造して整形するために使用しました。
・ドライバー、ニッパー、定規、カッター、パーマセルテープ(黒)、カッティングマットなど
適時必要なものをご用意ください。
作成手順
ピンホール穴の工作以外は簡易的に記述しております。
1。銅箔に針を刺してピンホール穴を作る
銅板は加工が大変なのでペラペラの薄い0.02mm厚の銅箔に、絹針の先端を刺して回転させつつ直径0.2mmの穴になるように開けるように
します。一番細い絹針ですが太さが0.5mmほどありますので、先端部の細い部分だけ刺して幾度も回転させて正円になるように穴を開けました。
でもきちんと0.2mm穴にするには難しいので、幾つか穴を開けて一番良い物を選択するようにします。穴を開けたら400番手の紙やすりで軽く
削ってバリを取るようにします。っでマイクロスコープで穴が0.2mmに近くて正円になっているものを決めました。(かなりいい加減な
計測ですが...)
2。穴を開けた銅箔に下地処理とアクリル塗料を塗りカットする
カッティングする前に、選択した穴の周りにアクリル塗料が付きやすいようにプライマー(下地処理剤)をして乾いたらアクリル塗料で黒く
塗ります。注意点としてあくまで穴は処理せずに穴の周りだけです。0.2mmの穴なので塗料で埋まっちゃうのを避けるためです。両面行って
乾いたらカットします。ついでにパーマセルテープで固定して後でカメラに付け替えるようにします。
3。カメラを分解し不要な物を外す
カメラを分解してレンズを取り外して稼動部などを加工します。元のカメラより広角になるので、要らない突起物とかをカットして被ら
ないようにしました。不要な物を外したためにカメラカバーとの隙間が出来てしまいましたので、プラ板でピンホール穴を囲うようにした
ものをカメラカバーに取り付けて、さらにつや消し塗料で光の反射が無いようにしました。
4。ピンホール穴を取り付けてカメラを組み立て完成です
2のピンホール穴を貼り付けて、組み立てれば完成です。
テスト撮影と現像処理
出来たピンホールカメラで実際にテストするわけですが、使用するフィルムについて少し記述します。現在、ISO感度3200のフィルムは
冒頭に記述したコダックと他にイルフォードからも販売されています。どちらも最大露光指数(EI値)が25000での現像条件がデータシートに
記載されています。データシート以外の現像条件も有名なサイトの digitaltruth
photo の(The Massive Dev Chart)に記載されています。ですのでデータシートやサイト情報を元にして、使用現像液や現像時間を
求めてくださいませ。
今回私はコダックではなくてイルフォードのDelta 3200 professionalのフィルムを使用しました。サイトの比較画像でなんとなくイル
フォードの方が私の好みであっただけで、それほど大きな理由ではありません。っで今回の露光指数(EI値)は12800で2段増感だったので、
このためだけに市販現像液を買うのも管理が手間だと思ったので、普段の増感用でストックしている自家調合現像液のPerfection XR-1処方
で試してみました。超高感度フィルムでは使ったことがないので不安でしたが...
テスト撮影の結果は下記画像となります。現像液の希釈割合や現像時間は適当に決めました。もう少し現像時間を伸ばせば適正現像だった
ようです。超高感度のフィルムですので粒状性はツブツブ感が満載って感じで、さらにピンホールカメラですのでフォーカスが非常に甘い
ですが、これはこれで味があって面白い気がします。なによりも、ピンホールカメラに超高感度フィルムであれば手持ち撮影できることで、
撮影の機動性を上げられるのは大きな利点になるんじゃないでしょうか。
今回のようにシャッタースピード固定ではなくてシャッタースピードが変えられるものであれば、手持ちであと2段ぐらいシャッタースピード
を遅くできるために曇りの日から晴れまでの範囲で撮影できるようになるかと思います。またシャッタースピードが変えられれば、低中庸度
フィルムで三脚を立ててレリーズで長時間露光で撮ることと超高感度フィルムに詰め替えて手持ちでバシャバシャと撮るといったことの両方
できますので、ピンホールカメラ撮影での幅が拡げられるかと思います。
とにもかくにも行動的に撮影できる手持ちピンホールカメラって、使っていて結構楽しめるものです。もし興味がありましたら、ぜひ試して
撮影してくださいませ。
※。スキャナで読み込んで縮小しただけの画像(スキャナのゴミがあるけど)
※。上の画像を縮小せずにそのまま一部だけ切り取った画像